容疑者の夜行列車

容疑者の夜行列車

容疑者の夜行列車

ずっと興味のあった多和田葉子さんの著書をはじめて読んだ。
日本語なのにどこか日本語ではないような文章で、
寝ているのか醒めているのか分からない不思議な物語が13篇綴られていた。


ドイツ語でも本を出しているらしく、不思議な文体が腑に落ちた。
言葉を再構築した、格調高く重厚で翻訳のような文体で私は好きだ。


話は世界のどこかへ何かの用事で列車に乗って向かう一人の日本人らしき人と
奇妙な乗客たちのやり取りで構成されている。
異邦人として海外で、同じように一人で電車に乗ったことがある私としては、
話に出てくるような理解しがたい人物と、必要以上の警戒心から
周りから見たら自分が奇妙な日本人であったという経験を思い出させてくれた。


楽しいだけではない、旅にある不安や焦燥を感じさせてくれる本だった。